生活とは切り離せないお茶。
子供の頃から慣れ親しんでいる飲み物だが、実はお茶についてきちんと知らないことも多い。
知らなくても何も問題はないが、せっかく飲むのであれば、「お気に入りのお茶」を選んでみたい。
ところで「おいしいお茶」とは、どんなお茶のことなのだろう?
以下に「おいしいお茶の定義」をまとめていくが、これはあくまで一般的なものであり、必ずしも「自分がおいしいと思うお茶」とは限らない。
おいしいお茶の「定義」を知ろう
紅茶? 緑茶? お茶の木が教える「おいしさ」の答え
お茶はどうやって作られるのか…など知らなくても、おいしいお茶を飲むことさえできれば、それで十分だ。けれど、おいしいお茶とはいったい何だろう。お茶を知ることで、その秘密も見えてくる。
まずは、お茶の木について。茶の木の種類は大きく二つに分けられ、その二つの葉にそれぞれ特徴がある。
- アッサム種…ちょっと渋め、紅茶に向く
- インド、アフリカなどの亜熱帯から熱帯地方での栽培に適している。タンニン(渋み成分)を多く含み主に紅茶向き。
- 中国種…渋みもまろやか、緑茶に向く
- 比較的寒さにも強く、中国や日本などの温帯地方での栽培に適している。タンニンが少なく主に緑茶向き。
お茶は「作り方(加工)」で特徴が決まる
茶の木から葉を摘み取ればお茶の出来上がり、ではなく、その後、何らかの方法で加工する。この加工方法が、それぞれのお茶の特徴となる。
- 不発酵茶(発酵させない)→緑茶
- 製造工程の最初で、蒸す(9割がコレ)、炒る、炙る、干すなどでの方法で熱を加え、茶葉の中の酸化酵素の働きを止める。ビタミンCの酸化も防止され、ビタミンC含有量が多い。
- 半発酵茶→ウーロン茶、中国茶
- 製造過程の中に発酵の工程を一部取り入れる。緑茶と紅茶の中間。
- 発酵茶→紅茶
- 発酵させることでカテキン類が色素成分に変化し、赤銅色や紫黒色の茶になる。
- 後発酵茶→プーアール茶、阿波挽茶、ルイボスティー
- 茶の葉を加熱処理し、酸化酵素の働きを止めた後、微生物による発酵を行う。
- 二次加工茶
- いったん製茶工程が済んだお茶を、さらに加工。
採れる時期によってもおいしさが変わる
お茶は摘む時期によっても風味が異なる。早い時期になるほど、栄養も旨みも多く含まれている。
- 一番茶(4月25日頃~5月10日頃)
- 最初の新芽を摘んだ生葉から作ったお茶。栄養分やうまみ成分(アミノ酸)が多く含まれる。
- 二番茶(6月20日頃~7月5日頃)
- 二回目に摘んだもの。
- 三番茶(7月25日頃~8月10日頃)
- 三回目に摘んだもの
- 秋冬番茶(10月上旬~中旬)
栽培方法、加工方法、摘んだ時期…お茶の味を決める要素はいろいろ!
- 煎茶・深蒸し煎茶
- 国内生産量の約8割を占める日本茶の代表。このうち、製造加熱工程が煎茶よりも長い時間(60~120秒)蒸して作ったものが深蒸し茶葉。
- 玉露・かぶせ茶
- 茶葉に覆いをかけ、直射日光を避けて栽培した高級茶。煎茶よりもうまみ成分が多く、苦味が少ない。日光を遮る期間は、玉露は20日くらい、かぶせ茶は7日くらい。
- 茎茶(雁が音/かりがね)
- 茎の部分や葉を多く含むお茶でてん茶、玉露用の品種。玉露や下級煎茶の仕上げで選別された若い茎は「雁が音(かりがね)」という。
- 蒸し製玉緑茶(ぐり茶)
- 大正末期、ロシア向けに開発されたマル形、勾玉状の煎茶。
- 釜炒り製玉緑茶
- 茶葉を鉄釜で炒って仕上げたもの。釜香(かまか)と呼ばれる独特の香りがある。佐賀、熊本など、九州を中心に作られる。
- 碾茶(抹茶の原料)
- 栽培法は玉露と同じで、蒸した葉の葉脈を取り除き、もまずに乾燥させて製造する。
- 番茶
- 新茶が伸びて古くなったりしたもの。夏や秋に摘んだ比較的大きい下級葉を原料にしたお茶。すっきりした香りと味わいがある。
- 玄米茶
- 番茶や煎茶に炒った米などを混ぜたもの。玄米は香りが弱いため、白米が使われることも。
- ほうじ茶
- 番茶や下級煎茶を強火で炒り、香ばしい香りをつけたもの。食後の茶として好まれる。
名前が素敵!お茶の品種
種類 | 特徴 |
---|---|
やぶきた | 渋みがまろやかな人気品種。全国の栽培面積の約8割を占める。 |
ゆたかみどり | やぶきたに次ぐ第2位の生産量。九州南部が主生産。 |
あさつゆ | 濃い緑色。天然玉露とも呼ばれる旨みが強い品種。 |
さえみどり | やぶきたとあさつゆの交配種でやぶきたより早く多く収穫できる。鹿児島、宮崎が生産地。明るい緑色で渋みが少なく甘さを感じる。 |
ベニふうき | 渋みが強く、紅茶に使われる。(スギ花粉に効く) |
さやまかおり | やぶきたの自然交雑から選抜した品種。香りが強く出る。 |
ごこう | 京都の宇治種から選抜された。玉露用の品種。 |
全国津々浦々、お茶の銘柄はたくさんある
- 静岡茶(静岡県)
- 全国の約45%の茶を生産する深蒸し茶の主産地。牧之原大地、大井川流域(川根茶)、阿部側流域(本山茶)、天竜川、大田川流域などで特色のある茶が作られている。
- 鹿児島県(鹿児島茶)
- 静岡に次ぐ第2位の産地。
- 三重県(伊勢茶)
- かぶせ茶の生産量が日本一。
- 宮崎県(宮崎茶)
- 釜炒り製玉緑茶など。
- 京都府(宇治茶)
- 玉露の代表的産地。
- 奈良県(大和茶)
- 大和高原の山間地で良質の茶が生産される。
- 福岡県(八女茶)
- 玉露の生産量は日本一。
- 佐賀県(嬉野茶)
- ルーツは釜炒り製玉緑茶だが、現在は蒸し製玉緑茶が多い。
- 熊本県(熊本茶)
- 煎茶、玉緑茶の生産が大半。
- 愛知県(西尾茶)
- てんちゃ(抹茶)の生産高が日本一。
- 高知県(土佐茶)
- 自生のヤマチャ(野生、半野生の状態で生える茶の木)を利用して作る碁石状の茶「碁石茶」もある。
- 徳島県(阿波番茶)
- 夏に作られる番茶。
- 沖縄県(ぶくぶく茶)
- 炒った米のお湯と番茶、サンピン茶(ジャスミン茶)などを混ぜ合わせ、茶せんでブクブクとあわ立てたお茶。
- 島根県(ボテボテ茶)
- 煮出した番茶を茶碗に入れて泡立てた後、ご飯や漬物、佃煮などを入れて食べる。
- 岐阜県(美濃茶)
- 冷涼な環境で栽培され、爽やかな香りがある。
- 滋賀県(近江茶)
- 煎茶が中心。信楽町の朝宮茶は香りの高い良質茶として定評がある。
- 秋田県(檜山茶)
- 日本海側の栽培、収穫の北限。
- 新潟(村上茶)
- 明治時代にはアメリカやウラジオストクへ輸出されていた。
- 茨城県(奥久慈茶)
- 茶の生産ができる地域の日本最北限。
- 埼玉県(狭山茶)
- 仕上げに狭山火入れという独特の火入れ技術を使うため、独特の香りがある。