これまでの住処から学んでみた「引き算の理想」から家を建てる方法

おうち 工夫する
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「今、自分はすべての理想が詰まった家に住んでいる」
と言える人は、果たしてどのくらいいるのだろうか。

どんなにこだわって作った、あるいは選んだ家であっても「もう少しここがこうだったら」「ここは気に入らない」という部分があるかもしれないし、今はよくても数年後には「やはりこうした方がよかった」と思うことも出てくるかもしれない。

けれど、家は大きな買い物(物理的にも金銭的にも)なので、気に入らないからと言って簡単に変えるのは難しい。
結果、「理想の家には住めない」ことを前提として、それでも多くの人は「住めば都」だと開き直り、それなりに暮らしている。
というより、100パーセントの家を求めるより、その方が楽で幸せだったりもする。

さて、私は今「最期から2番目の家」に住んでいる(最期は高齢者向けの住宅で生涯を終えるつもりなので)。
今の住処は2020年から居住し始めた注文住宅である。
注文住宅というと、夢や理想がいっぱい詰まったおうち…というイメージだが、実はちょっと違う。そもそも家を建てるつもりなど全くなかったのに、とある事情から「建てざるを得ない(しかも短期間で)」ことになり、必死で勉強と情報収集して建てたのだ。

家を建てたと聞いて、「見せてー」とやってくる人々は、部屋を案内すると皆口ごもる。
「え? 注文住宅ってこれ?」
まったく工夫がない(ように見える)間取り、素敵でも何でもないインテリア、そして狭い。
だが、ここには自分なりの「夢」と「理想」が入っている
この家を建てるまで、私はいくつかの住居を経験してきた。そこから、知らず知らずのうちに家に対する「現実的で具体的な夢と理想」が形作られていった。

まずは、これまで住んだ家を振りかえってみよう。

これまで住んできた7つのおうち

1.おんぼろ平屋(幼少時) ※母の実家の敷地内にあった住宅

実はこの「おんぼろ平屋」の前にもいくつかの家に住んでいたらしいが、幼すぎて全く記憶にないので、4歳頃に住んでいた家が自分にとって最初の「住処」である。
恐らく当時の平均的な平屋だったと思う。6畳くらいの板張りのダイニングの他に、6畳の畳敷きの部屋が3つあった。

2.広めの平屋(6才~8歳、そして18歳~28歳) 

この家は、両親の夢と理想が詰まった(と思われる)注文住宅だった。1970年代後半の家だが、素材や作りはそれなりにしっかりとしたものだったので、もしかしたらお金もかかっていたのかもしれない。一度、転勤で離れるが、家自体は約45年間存在しており(現在は解体)、「実家」と言えばこの家だった。
12畳くらいのリビング、6畳くらいのDK、6畳の部屋が2つ、8畳の和室、そして玄関(三和土部分も含めると4畳くらい)という間取りだったが、後に10畳ほどの個室、4畳ほどのサンルーム2つが増築される。

3.集合住宅の5階(8歳~10歳)

当時の極々一般的なアパート(団地)。6畳のDK、6畳の居間、6畳、及び4.5畳の個室という間取り。ちなみに転勤族だったので、「3」と「4」は社宅である。

4.3階建ての家(10歳~18歳)

この家はずいぶん変わっており、狭い台所、4.5畳のダイニング、6畳のリビングが1階で、中2階、3階に6畳の個室があるという間取り。中2階の下は部屋ではなく、外からしか入れない納屋のようになっていた。(ちなみに1階の上と3階の上はそれぞれ「屋上」になっていた)

5.2階建てコーポの1階(新婚時代)

1990年代終わりごろの新築コーポ。縦長キッチンの横に8畳ほどのLDがあり、そのほか6畳の部屋が2つと4.5畳の部屋。収納は押入一つにクローゼット一つ、だった気がする。

6.80年代築のアパートの4階(主に30代)

家賃の安いアパート。6畳のDK、その横に6畳の居間、6畳の個室が2つ(すべて畳敷き)。住んだのは2000年代初期だが、建物自体は1980年代のものだったので、かなり古い印象だった。収納として、押入の数は3つもあったのだが、奥行きが90センチで押入のように中央部分が棚で仕切られており、非常に使いづらかった。実は今でもまだこのアパートは存在している…。(2023年現在で築年数約40年)

7.新築分譲マンションの7階(主に40代)

終の棲家の予定で購入したマンション。19畳のLDK、6畳の部屋が2つに5畳の部屋が1つ。収納は、押入、クローゼット2つ、廊下に物入が2つ。数ある分譲マンションの中から、立地、間取り等、もっとも理想に近いものを選んだので、一応は満足していた。

7つのおうちから学んだこと

家は3回建てないと満足しないと言われているが、実際に初めての家を建てる前に、すでに7軒もの家に住んでいた。うち集合住宅が4軒、戸建てが3軒。自分で建てた家ではないが、これだけ住んでいるとある程度の現実的な理想も固まってくる。

まず、幼少時のおんぼろ平屋は別として、独身時代にとにかく自分が切実に願っていたのは「プライバシーが欲しい」ということだった。3姉妹だったため、全員が同じ部屋、やっと個室がもらえてもリビングと扉一枚で、テレビやおしゃべりや食事などのすべての生活音が聞こえてくる。家族も遠慮なしにこちらの部屋に入ってくるので、全く落ち着かなかった。

逆に気に入っている点としては、「窓からの景色があること」。実は「5」のコーポを除き「他人から部屋を覗かれそうな家」に住んだことはない。家族内のプライバシーはなくても、外部からはプライバシーは守られていたのだ。
つまり、自分が重要だと感じているのは「プライバシーがある」ことらしい

結婚後は、二人家族のため、プライバシーに関しては問題はなかったが、今度は別のことに気づく。それは「収納力」だ。そのため、収納について長く研究を重ねることになる。

そしてもう一つ気づいたのは、自分がとても面倒くさがりなこと(気づくというより、既にわかりきっていたことだが)。叶うなら、こたつの中だけで暮らせたらどんなに幸せだろう…と思うほど、ひとつの場所から動くのを面倒に思ってしまうのだ。だから、動線が悪いと非常にストレスを感じる

7つのおうちから学んだ、絶対に死守すべきおうち選びの3つの条件
 ・プライバシーが守られている
 ・収納力がある
 ・動線がよい

理想と夢の詰まった家を建ててみた

引き算の理想で家を作る

前述したが、今の住処である住宅は、「マイホームが欲しい」と願って建てたというよりも、突然そうせざるを得ない状況になって建てた。
だから「ネットで見た素敵なおうち」とか「工夫を凝らした自分だけの内装」みたいな、ぼんやりした理想すら持たない状態で家づくりをスタートした。結果的に、「あれが欲しい」「あんなふうにしたい」という「足し算の理想」ではなく、どちらかというと「あれはしたくない」という「引き算の理想」で考えた結果が今の家だ。
なので、他人が見ると「狭い平凡な家」に見えるが、実は私なりの工夫が詰まっているのである。

  • プライバシー(自分だけでなく、同居人がそう感じられる動線と間取り)
  • 収納力(数や広さだけ求めるのではなく、収納したいもの収納できる場所)
  • 楽な動線(よくある「家事楽」ではなく、自分の行動パターンを分析した動線)

これが、自分の引き算の理想である。そして出来上がったのが…

8.平屋(主に50代~)

16畳のLDK、8畳、7畳の個室。収納はクローゼット(押入と同じ奥行き)が3つ。
間取りはこんな感じだが、家づくりに当たって考えたことも書いておこう。

  • 価格
    • 今の資産(年収含め)で買える家ではなく、今後の人生で使うすべてのお金を考慮する。お金は家だけでなく、日ごろの暮らしや娯楽にも使いたいので、資産から見るとかなり低価格である。
    • お金をかけるのは、広さや豪華な設備、収納ではなく、断熱性や基礎の部分にした(おかげで夏は涼しく冬は暖かい、とても過ごしやすい家である。光熱費も抑えられて一石二鳥)
  • 広さ
    • できる限り「狭い」家にする。(プライバシーや収納の問題は「広さ」ではなく間取りである…ことを7つの家から学んでいた)
  • 居住期間
    • 最期から2番目の家だと意識する。(立地や相続の問題があり、死ぬまで住むことはムリなので、持ち家とはいえ一時的な仮住まいの気持ちで)

正直なところ「もっとこうすればよかった」と思う部分がないわけではない。けれど、引き算の理想を形にした家は、根本的なストレスにつながりにくいと思う。