ホットフラッシュと漢方
更年期障害の代表的なものとして、突然体がほてって汗が噴き出す「ホットフラッシュ」があります。ここでは、漢方によるホットフラッシュ対策をまとめてみました。
漢方では「体がほてる」「汗が出る」症状を、単なる「熱」ではなく、体の「陰陽バランス」や「気の巡り」の乱れとして捉えます。
- 閉経後(=“陰”が減る)
- バセドウ病(=“気”や“陽”が過剰になりやすい)
という背景がある場合、体に熱がこもるタイプの虚証”が多いです。
おすすめの漢方
加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 更年期障害の第一選択といわれるほど有名。
- イライラ、のぼせ、肩こり、不眠、冷えのぼせなどを伴うタイプに。
- ホットフラッシュに伴って情緒不安や緊張を感じる方にも合います。
自律神経の揺らぎに対して、体と心の両面に作用します。「背中が熱く、顔にも汗」というパターンに適合するケースが多いです。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 冷え(手足の冷え)が目立ち、血行不良(疲れやすさ・むくみ・生理不順)を伴うタイプ。冷えを伴うが、体表で汗をかく人にも使われる。
- 冷え性、貧血傾向、下腹部の不快、生理不順など。冷えを伴うホットフラッシュ傾向の人が「冷えを補いつつ巡りを整える」目的で使う場合がある。
- 冷え寄りの方に合いやすいが、体力低下・胃腸虚弱の方は服用で胃の負担を感じることがある。甲状腺治療との相互作用は一般的に大きくは報告されていないが、必ず医師・薬剤師に相談。
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
- 体の“陰”が不足して体内に余分な熱がこもるタイプ。
- 口や喉の渇き、寝汗、顔のほてり、のぼせ、腰や膝のだるさがある方に。
閉経後で、季節を問わず体の芯が熱い・寝汗がある方にはよく用いられます。「加味逍遙散でイマイチのぼせが取れない」ときに切り替え候補になります。
体質が「冷え・陽虚(身体が冷えて冷える)」の場合には合わない可能性があります。胃腸が弱い方・下痢しやすい方・長期間大量服用は注意。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- “血の巡り”が悪く、体に熱がこもってのぼせや顔の赤みを伴うタイプ。
- 肩こり、頭痛、下腹部の張りなどを伴う方に。
比較的体力のある方向き。バセドウ病の方では、動悸が強い時期などは合わない場合があります。
女神散(にょしんさん)
- 精神的な不安や焦りが強く、発汗・動悸・不眠を伴うタイプ。
- バセドウ病や更年期の「情緒性ホットフラッシュ」に合うことがあります。
💡選び方のヒント
- 心身の緊張やイライラが強い場合 → 加味逍遙散
- 寝汗・体の熱感・口の渇きが強い場合 → 知柏地黄丸
- 顔ののぼせや肩こり、体力がある場合 → 桂枝茯苓丸
- 不安・動悸・不眠がつらい場合 → 女神散
最初は、体に優しく調整する「加味逍遙散」から始める方が多いです。もし2〜3週間で効果が乏しい場合、知柏地黄丸に切り替えると改善するケースもあります。
注意点
- バセドウ病の薬(メルカゾール・ヨウ化カリウム)との併用は基本的に可能ですが、胃腸の弱い方ではまれに副作用(胃もたれ・下痢)を感じることがあります。
- 市販薬を試す場合は、「ツムラ24番 加味逍遙散」「クラシエ加味逍遙散」などが一般的。
- 1か月ほど続けても変化がなければ、漢方外来(内科・婦人科)で体質を詳しくみてもらうのがおすすめです。
冷え性体質とホットフラッシュ
冷え性は体の“陽(温める力)”が弱く、“陰(冷え・水)”が強めの体質という漢方的な見方もあります。
一方、閉経後や甲状腺機能亢進(バセドウ病)後は、“熱感・ほてり・発汗”が出やすくなります。つまり、「冷え→ほてりへ変化」している体質変化の可能性があります。
漢方では、冷え(陽虚・寒証)とほてり・汗(陰虚火旺・熱証)は相反するタイプですが、体質が変化したり、複数の状態が重なったりします。冷え性だった過去は「今の体質の土台」として意識すると良いです。
例えば、体が冷えて血行が悪かった時期があった → その後エストロゲン低下→陰虚火旺の状態に移行しやすい。
冷え体質+汗・ほてりという矛盾があるときは、漢方的に「陰(冷える・水分)と陽(熱・発汗)のバランスが乱れている」ことを示唆するため、選ぶ漢方薬の方向性(熱を取る/巡りを整える/冷えを補う)を慎重に考える必要があります。
つまり、冷え性だったという過去を「体を冷やす傾向があった」という前提にして、今の“ほてり・発汗”という熱めの症状を漢方的にどう捉えるかがポイントです。
→ 体が「冷え+熱(ほてり)」の両極を行き来しているなら、冷え・熱両方に対応できる漢方(巡りを整える・熱を取る・冷えを補う)を選ぶとよいでしょう。
手指の病気
更年期になると、手指に違和感を感じることが増えます。
自分の症状をチェックし、早めに整形外科へ。整形外科で不安であれば「手外科専門医」へ相談してみましょう。
主な手指の病気と症状、改善方法について
手根管症候群
親指から薬指にかけてしびれる。悪化すると親指のつけ根の筋肉が痩せ、きれいなOKサインが作れなくなることも。
親指から薬指の正中神経が手首の手根管で圧迫されて起こる。
装具で手首を固定し、消炎鎮痛剤やステロイド注射など。パソコン作業には手首枕を使うなどの工夫も大事。改善しない場合は手術。
母指CM関節症
親指のつけ根にある母指CM関節に痛みや腫れが起こる変形性関節症。ビンのふたを開けるときに特に強く痛むのが特徴。
悪化すると親指がZ型のように変形することも。
関節を保護する装具で安静にする、または消炎鎮痛剤やステロイド注射など。改善しない場合は手術。
体操やマッサージで動かすことも重要。
腱鞘炎
ドケルバン病
親指のつけ根の手首のあたりが腫れて痛く、親指が伸ばせなくなる。
親指を伸ばしたり、広げたりする壁とが通るトンネル状の腱鞘に炎症が起こるのが原因。
テーピングや装具で安静にして、消炎鎮痛剤や離職内にステロイド注射。改善しない場合は手術。手指の運動やストレッチが大切。
ばね指
人差し指から小指までの指のつけ根を押すと痛み、指を曲げるとカクンとひっかゕるバネ現象がある。指を曲げ伸ばしする壁と、髪が通る健常に炎症が起こる腱鞘炎。
ドケルバン病と同様、安静(テービングや装具)と消炎鎮痛剤やステロイド注射がおもな治療。腱の働きを高める運動やストレッチで改善しやすくなる。
ヘバーデン結節
第1関節に痛みや腫れ、変形が起こる指の変形性関節症。進行すると関節内の軟骨がすり減り、骨棘(変形によって生じる骨のトゲ)ができたりコブができたりする。
痛みや腫れに湿布薬や塗り業の消炎鎮痛剤、関節へのステロイド注射など。これらだけでは徐々に手指の筋力が衰え、変形が進むことも。体操やマッサージも欠かせない。
ブシャール結節
ヘバーデン結節と同じ症状が第2関節に現れる変形性関節症。
痛みや腫れ、変形があり、腫れの状態が硬く、へバーデン結節と併発する場合。
湿布業や塗り薬の消炎鎮痛剤、炎症を抑えるための関節へのステロイド注射も。痛みが取れないときは手術。体操やストレッチも必要。
関節リウマチ
第2関節か指のつけ根の関節に痛みやブヨブヨとやわらかい腫れが起こる。特徴的な症状は、左右同時に起こる起床時の手指。微熱、食欲不振、だるいなどにも要注意。関節リウマチが疑われるようならリウマチ内科、膠原病内科を受診すること。

