「着る」という簡単な作業で、自分の世界を大きく変えてくれる、服。
服と上手に付き合っていくために、「自分だけのクローゼットを作る」ことをめざしたい。
自分だけのクローゼットとは、「自分が着る服、お気に入りの服、役に立つ服、自分をきれいに見せてくれる服」だけが収納されたクローゼットのこと。
着ない服、好きではない服、役に立たない服、きれいに見せてくれない服…を、収納しておくのは、場所も時間ももったいない。
シチュエーション、TPO…意識しすぎると洋服選びが大変
現代人は様々なシチュエーションで暮らしている
365日、すべて同じシチュエーションで生活できる人は稀だろう。
寝る、仕事に行く(オフィスワーク、社外の人と打合わせがある)、気の置けない友人とカフェに行く、取引先との会食、デパートに行く、美容院に行く、わんこの散歩に行く、コンビニに行く、海に行く、ドライブに行く、旅行に行く服…
シチュエーションを書いていくと、本当にキリがない。
そして、その都度、そのシチュエーションに適した服を揃えようと思うと、これもキリがなくなっていく。
それは、ある程度仕方のないことだ。
縄文時代のように「狩り」「土器」「寝る」「食べる」くらいしかシチュエーションがなければ、毛皮や麻の服でも身につけておけばオールオッケーだっただろうが、現代人の行動範囲は広すぎる。
TPOにもある程度は気を配りたいし、ワンコの散歩の服で取引先との会食はさすがに失礼だ(どちらにも)。
だからと言って、細かすぎて伝わらないくらいにシチュエーションを意識してしまうと収拾がつかなくなる。
休日に百貨店に行く服、友達と会う時の服、通勤着…そんなにきっちり分ける必要はあるのだろうか?
実際、「○○の時に着ようと思っていたけれど、ほとんど出番がない」という服も存在する。
様々なシチュエーションで生活しながら、かつ汎用性の高い服、つまりは「オールシチュエーション」で着られる服について考えてみる。
服を着るシチュエーションを考えてみる
まずは自分はどんな場面で服を着るか、書き出してみる。
書き出すときは、出来るだけ具体的に書いた方がよい。
「仕事で人と会う」ではなく、「税理士のNさんと打合わせをする」など。
下の表には「ちょっと高級なお店」と書いたが、書き出すときには「○○ホテルでアフタヌーンティーを楽しむ」などの方がよい。
(実際に私は、「グランドハイアットホテルでアフタヌーンティーを楽しむときの服」を想定し、そして実際にその服を着てアフタヌーンティーに行った)
「友人とランチ」も「友人のKさんとランチ」の方が具体的に考えやすい。
下の表ではゾーンにカテゴリー分けしているが、まずはカテゴリーなど考えず、とりあえず思いつくまますべて書き出してみる。
ZONE1 | 在宅ワーク。犬の散歩、スーパーマーケット、コンビニ。 |
ZONE2 | カジュアルな外出。美容院、簡単な仕事の打ち合わせ、病院、モールなどでのショッピング、カフェ、友人とランチ、ドライブ、旅行、街歩き、自然散策、美術館や博物館で芸術鑑賞など。 |
ZONE3 | フォーマルな外出。ちょっと高級なお店でディナー、百貨店でショッピング、仕事で受付や司会等など「表に出ることも」。年に数回の観劇も趣味。 |
これを整理して「どんな服が必要か」を考えてみる。
意外とできる⁉ オールシチュエーション(に近い)洋服の揃え方
一番多いシチュエーションは? 最も服が必要な場面
上記のシチュエーションの中で、まずは最も着る機会が多いZONEを考えてみる。
主婦で在宅ワークをしている私の場合は「ZONE1」だが、ここで着る服が多く必要だと言える。
仕事着や通勤着ではなく、どちらかというと「主婦」的な服が必要となる。
つまり、いわゆる「普段着」が最もよく着る服。
といっても「家で誰にも会わずごろごろするときに着る」のではなく、近所に出かけるとき、誰かが突然訪ねてきたときに恥ずかしくない服。さらに、仕事気分を高めるためにも、ある程度ちゃんとした身なりがいい、と考えている。
なので、ジャージとトレーナーなどではなく、「ワンマイルウェア(シャツにロングスカート、たまにパンツ)」が普段着の「ZONE1」だ。
ワンマイルウエアとちょっとしたお出かけ着、その境目は曖昧
次に出番が多いのが「ZONE2」である。
もしかしたら、多くの人はこのゾーンが一番多いかもしれない。
毎日通勤する人なら、恐らく仕事日の服はここに当たるだろう。
それでは、ZONE2に必要な服を考えよう…!と行きたいが、よく見ると「ZONE1」でも私は「カジュアルな服」を着ることが多い。
「シャツにロングスカート」などが定番だ。
「ZONE1」よりも少しおしゃれに気を配る感じにはなるが、「ZONE1のボトムスまたはトップスを変えれば、カフェでランチくらいには着ていけるような服(ZONE2)」にもなる。
「ZONE2」は、「ZONE1」または「ZONE3」の服をミックスして「流行のシルエットに仕上げる」「比較的新しい服を着る」「一部はカジュアル、一部はおしゃれ着」などコーディネートすることもできる。
つまり、ZONE2は、ZONE1や3と(すべてではないが)併用できる部分も多いのだ。
また、日常的に併用していなくても「ZONE2の服が少し劣化してきたので、ZONE1で着る」ということもできる。
ちゃんとすべきフォーマルシーンの服も「併用」してみる
難しいのがZONE3(フォーマル)。
さすがにZONE1の服でZONE3という状況は、なかなか想定できない。
ワンコの散歩の服で、仕事のセミナーの司会はできない。
だが、ZONE2とZONE3なら併用できる場面も考えられる。
ZONE2用に買った服で、トップスや小物次第ではフォーマルにも使える服もある。
また、私の場合ZONE3のシチュエーションはそんなに多くない。
だから、まずは基本のフォーマル着として「黒のシンプルなワンピース」「ネイビーのジャケット」「シルクのブラウス」など、とりあえず「これを着ておけばきちんと見える」という服を数枚用意する。
本当に格式を必要とする場面なら、上記のような「いかにもフォーマル」が必要だが、そこまでちゃんとしていなくてもよいという場面もある(ホテルでのアフタヌーンティーなど「スマートカジュアル」でOKなシーン)。
そんな時こそ「併用」である。
シルクのブラウスを着れば、ボトムスはチープなパンツでもきれいに見えるかもしれない。
ネイビーのジャケットさえあれば、インナーはシンプルなTシャツでもOKな場面もあるかもしれない。
逆に、シルクのブラウスを「着崩す」ことで、ZONE2でも使えるし、ネイビーのジャケットなんかはデニムにも合う。
黒のワンピースなどは万能なので、ZONE3のほとんどのシーン、ZONE2の一部で着ることができる。
昭和時代に比べて、全体的に服装がカジュアル化しているので、この辺はかなり柔軟にできそうだ。
カジュアルアップとフォーマルダウン、今日のシチュエーションはどっち?
私はかつて、TPOの線引きをやたらシビアにしており、「絶対に仕事でしか着ない服」「どこかにお呼ばれされ、そのために買った服」「ドライブのための服」などと揃えていた。
だから「その日限り」で着ない服も多発していた。
しかし、オシャレ上手はコーディネート上手。裏を返せば、コーディネートがすべて。
フォーマルな服をフォーマルシーンだけで着るのではなく、「どこまでカジュアルダウンできるか?」考える。
カジュアルな服をカジュアルシーンだけで着るのではなく、どこまでドレスアップできるか?」考える。
こんな風にコーデを工夫と、服の枚数は少なくても、コーデは広がり、一着の服の出番も多くなり、自分のコーデテクニックも格段に上がる。
ファッション誌の活用方法はモデル気分で「理想」を描くこと
実は、50を過ぎるまで知らなかったことがある。
ファッション雑誌(Webの記事も)の活用方法だ。
これまではどんなふうにファッション雑誌とやらを買ったり、ネットでおしゃれな人のファッションを探していたのかというと、「どんな服を買うか」の参考にするためだった。
ファッション誌で紹介されている洋服は、概ね「お高い」。
(普通に見えるシャツ)23,000円、(きれいだがそんなに着ないであろう)スカートが56,000円…
さすがに、いくら興味を惹かれても、おしゃれに自信のない私がその金額を出す勇気はなかった。
が、その辺は私もバカではない(?)ので、「雑誌に載っているものに似た安い服」を探すためのヒント、として雑誌を活用していた。
これはこれで間違ってはいないだろう。
ただし、ファッション誌の活用の方法は、多分それだけではない。
ファッション誌では、お化粧しヘアセットしたモデルが、服を着て靴を履き、バッグを持ってカフェでお茶を飲んでいる。
正直なところ、カフェでお茶などどうでもよく、「このセーターがかわいい」「このスカートが素敵だ」と、服そのものにしか目が行っていなかった。
だが、本来の活用方法は、「カフェでお茶をするときに似合いそうな雰囲気」をチェックすることだ(と思う)。
モデルが着ているのと同じセーターを買うのではなく、自分がカフェでお茶するときにこんな雰囲気になりたいという、理想を描くためのヒントなのだ。
「素敵な服+素敵な服=素敵なコーデ」ではない。
「普通の服+普通の服=素敵なコーデ」になることもある。
ファッション誌は服単体ではなく、シチュエーションも含んだコーディネートを見ること。