- 福岡は大陸に近く「アジア」を感じられる街。
- 微妙な位置にあるため、福岡は歴史の中で何度も破壊され、そして再生されてきた。
大陸からの招かざる客が街を砂漠色に変えていく
福岡の街が黄色に染まる日が年に数回訪れます。黄砂のせいです。
黄砂はどこからやってくるのか。
西のかなた、地球で最も広大なユーラシア大陸の、海からずっと離れた乾燥した場所、砂漠からはるばる偏西風に乗ってやってくるのだとか。
湿潤なこの国に暮らしていると、大陸も砂漠も馴染みがなくまるで異世界のようです。太陽が沈む場所の向こうにそんな場所があることを、黄砂はわざわざ伝えに来るのです。
砂漠色の砂は、福岡の街に降り注いで景色の色を変えていきます。
けれどこの現象を、まるでお花畑を眺めるようなのんきな気分で眺めている場合ではありません。黄砂には有害物質も含まれると言われており、環境や健康に被害をもたらすこともあって、迷惑千万、まったくもって招かざる客です。
黄砂はどこからやってくるのか。
砂漠? 大陸?…確かにそれもありますが、むしろ、もっと具体的に、大陸にある隣国のことを思い浮かべてしまいます。長年にわたり年子のきょうだいのように微妙な関係を続けてきた、あの国。
これはまあ、日本に限ったことではなく、地球のほとんどの地域が「隣国」と何らかのトラブルを抱えているようですが。
視界と空気がもやもやする黄砂の日、何だか心ももやもや…。
昔々のその昔、日本も大陸にあった、らしい
実は、かつては日本も「大陸」の一部でした。かつて、といっても100年前とか、1000年前とか、もっと遡って100万年前とか…いやいやもっと遡って、恐らく300年前とか500万年前とかと言われている、とても古い時代のことです。
500万年前…ようやく地球上に人類らしきものが誕生した頃。そんな大昔は今とは何もかも違っていたと思うので、今更どうでもよいのですが、「確かにそうだったんだろうな」と思える事実があります。
世界地図を見ると、日本とユーラシア大陸の間には日本海がありますが、よく見ると不自然に見えます。

大陸の端っこに長細い島。
考古学者でも地理学者でなくても、考えられることは二つ。
元々は日本はユーラシア大陸の一部で、縁の方がはがれたか、もしくは現在の日本と大陸の間に巨大な湖ができて、さらに端っこなどから水が入り込んで島になったか。
列島部分が隆起した、という説も考えられますが、それにしては長細すぎる気もするので、前述した2つのどちらかが正しいのでは、と思います。
そして、どうもその答えは前者のようです。およそ2000万年前に大陸の縁の部分がはがれて東へ離れていった、という説。
日本はいくつものプレートが重なり合った場所に位置しており、そのために時々大きな地震が発生していますが、そのプレートの働きによって、大陸から離れたりくっついたりを繰り返しながら、500万年前くらいには今の日本の形が何となくできていったようです。
現在のような「くの字」型になったのは、西南日本は時計回り、東北日本は反時計回りに地殻が動いたためだと言われています。
福岡と大陸は近すぎる…だからこそ生まれた歴史たち
さて、では大昔の福岡は、というと…。
遥か昔、ユーラシア大陸の東の端っこにくっついていた福岡ですが、日本列島のその他の土地と共に大陸を旅立ち、独立を選びました。
で、「終わった終わった」とエンディングを迎えた…で済まなかったので、福岡の現在に至るまでの長い長いストーリーが続いていくのです。
日本地図だけを思い描いていると、福岡は「本州」から切り離された「西の方」の島にある小さな都市にしか見えませんが、世界地図を見ると福岡は最も大陸に近い場所であることが分かります。
距離的には福岡から大阪や東京に行くよりも、大陸に行く方がずっと近いのです。
福岡から釜山までは直線距離で200㎞。広島や鹿児島との距離とほぼ同じで、もしも陸続きだったら、新幹線で1時間ちょっと。
この距離の近さで何も起こらない方が、おかしい。
もし、プレートの動きやら何やらが、少しずれていたら、もしかしたら福岡のある場所は、大陸に取り残されていたかもしれません。
そして、もしも福岡が大陸に取り残されていたら、もしも福岡が大陸とくっついていたら…
そんなことが起こっていたら…
けれど現実は、福岡は日本の列島の一部にあります。
こんな微妙な位置にあるからこそ、福岡ではいくつものドラマチックな歴史が生まれ、歴史の中で何度も破壊され、そして再生してきました。
ユーラシア大陸の風を最初に受け止める場所
大陸から様々な文化や人々を受け入れてきた場所
大陸から日本を守る場所
そういう運命を受けざるを得なかった場所
それが、福岡という場所です。
福岡にある「アジア」の文字
福岡は地理的にも歴史的にも、確かに大陸に最も近い場所。といっても、普段はまったくそんなことを意識する必要はありません。
けれど、福岡では時折そのことを思い出す機会があります。
ただし「大陸」という言葉ではありません。ユーラシア大陸に日本がくっついていた話など、今となっては知る必要もないことですし、有名な話でもありません。
多くの人が知っているのは「大陸はそもそも1つだった」というウェゲナーの大陸移動説などでないでしょうか。
それに比べると、福岡の移動説など、かつては地球のそこかしこで行われていたありきたりの事象の一つに過ぎず、スケールが大きい出来事の割には、とってもスケールの小さい話だったりするのです。
それに「大陸」とは東はロシアの北のあたりから、西はポルトガルまでと、あまりにも広すぎます。
だから、どこかの誰かが、日本を含めたユーラシア大陸東の方に「アジア」と名付けました。
この「アジア」という定義についても、色々と面倒なことになっているので、ここではこれ以上は突っ込みませんが、「アジア」という言葉、福岡ではよく見かけるのです。
アジア美術館、アジアンパーティ、福岡アジア文化章…
福岡は「アジア」をキーワードとしたイベントなどを積極的に開催している街。
「アジア」の文字を見かける時、大陸との数奇な運命について、ふと考えてしまうのです。